2014 painting

最後になりました。これも気軽に手を出せなかったけど図書館サマサマのお蔭です、画集篇。プラス、行き場を失ったけど入れておきたいαも一緒に。


ムーミン画集 ふたつの家族

ムーミン画集 ふたつの家族

今年はムーミンの年だったので、文庫シリーズもきちんと読み返しました。再読なので掲載は避けましたが、今年読んで良かったなぁとしみじみ思いけり。
ついでにと思って画集を読んでみましたが、これが存外良かった。トーヴェ・ヤンソンが児童小説家ではなく根っからの画家であると痛感させられた。何枚ものラフスケッチ、重ねられた微調整。
ムーミン一家へのコメントも、愛情深くあると同時に極めて的確で興味深かった。


ムーミン―名倉靖博画集 (MOE BOOKS)

ムーミン―名倉靖博画集 (MOE BOOKS)

もう一つのムーミンとも言えるだろう、日本アニメ版ムーミンを創った名倉靖博の画集。アニメ版ムーミンはあまり好きではなかったんだが(甘すぎると言うか、やわらかすぎると言うか。)、この画集を見て評価が変わった。名倉靖博という人が創造したもうひとつのムーミンの世界は、やわらかな風が吹いているよう。こちらの世界も好きと思えるようになったので、良い画集だった。


自殺うさぎの本

自殺うさぎの本

どうしてうさぎちゃんたちが、こんなに頑張ってまで自殺したいのかって? 知りませんよ! でも頑張ってるうさぎちゃんたち、すっごい可愛いんです!!


短歌ください (ダ・ヴィンチブックス)

短歌ください (ダ・ヴィンチブックス)

現代短歌の世界で最も知名度が高い穂村弘、通称「ほむほむ」(ファンの人々は皆そう呼ぶらしい。奇妙ですね)。彼の歌人としての手腕が垣間見える歌集、但し素人が応募した作品を選出した本です。
短歌をどう読めば、どう愉しめば良いのか解らない。そんなあなたの為の短歌入門書。穂村弘の解説が若干手ぬるいのが残念。もっと忌憚なくバッサバッサと薙ぎ倒してくれれば、もっと面白いだろうになぁという口惜しさ。


もしもし、運命の人ですか。 (MF文庫ダ・ヴィンチ)

もしもし、運命の人ですか。 (MF文庫ダ・ヴィンチ)

上記の穂村弘はとにかくエッセイが人気なので、今年はずらっと読み進めました。ベストは今のところコレです。
こじらせロマンチスト男子の真髄を存分に発揮している。ちゃんとした女性なら「誰なの、こんなになるまで彼を放っといたのは!?」と叫びたくなるでしょうね。でもこの人は好き好んでこじらせているので問題ありません。しれっといつの間にか結婚してらっしゃるし。
エッセイを仰山書き連ねておられますが、回を重ねるごとにこなれてくる感じがするのが、かえってよろしくない感じ。ので、初期の『世界音痴』が良かったです。

2014 illustrated

図書館に通うようになってから、「そうか、子供の利用者が多いから絵本が潤沢にある筈…!」と思い至り、今まで気軽に読めなかった分貪欲に読み漁っています。というわけで絵本篇、参りましょう。


ビロードのうさぎ

ビロードのうさぎ

酒井駒子のイラストが至るところで絶賛を浴びているので読んでみたところ、成る程素晴らしかったです。「ぬくもり」という姿形のないものを絵の具に変換する魔法の使い手なんだろうか。
『しろうさぎとりんごの木』でうさぎの可愛さを補充できますよ。


くまとやまねこ

くまとやまねこ

同じく酒井駒子イラストの絵本。表紙からすると「くまとことり」のように見えるが…? 
子供が読むに相応しい内容なのかどうかは不明。生き物の死について取り組むのは、どんなやり方であっても難しい。ただ、間違いなく名作。正直、大人が贅沢に読めば良いと思います。


うきわねこ

うきわねこ

えびお、かわいい。
真夜中に浮き輪に乗って空を泳ごう、なメルヘンワールドをほわほわなタッチで描かれてしまった。降参です。
表紙で惹かれた人は中にもっと「ギャーッ! いっそ殺してくれーッ!」と思うようなプリティなねこちゃんがいますので買って損はありません。一緒に悲鳴を上げつつ苦しみましょう。


オズの魔法使い

オズの魔法使い

リスヴェート・ツヴェルガーという画家が気になって『ノアの方舟』『くるみ割り人形』『不思議の国のアリス』『ブレーメンの音楽隊』『ハーメルンの笛吹き』などをざっと読んだが、一番好きなのがこちら。
原文から外れる描写は一切無く、シンプルなデザイン・色合い。なのにどこか懐かしい。とりわけ案山子の造形が好きだった。


漂流物

漂流物

デイヴィッド・ウィーズナーという絵本作家を知り、まずはと読んでみた一冊。文字の無いサイレント絵本ですが、衝撃を受けました。
文字が無いのに、展開が情熱的。
しっとりとした美麗なイラストで先へと流れていく、今まで読んできたサイレント絵本とは一線を画している。絵と絵の繋がりがダイナミックで、頁を捲るのがたまらなく愉しい。次に何がくるんだろう、とわくわくできる。
今作は漂流してきた防水カメラを現像すると、とんでもないモノが写っていた…というお話。作者の想像力と表現力が卓越しているので、安心して期待しちゃって下さい。


セクター7

セクター7

こちらもデイヴィッド・ウィーズナー作。エンパイア・ステート・ビルに登った少年が、雲の工場(セクター7)に招かれるお話。
『漂流物』ほど頁ごとのダイナミックさは重視されていないが、こちらは雲たちの表情がとにかくユニークでたまらない。茶目っ気たっぷり。

critic

批評、という言葉に堅苦しさを感じるあなたへ。


* * *


たとえばあなたが、とても好きだと感じた作品があるとする。本でもいいし、音楽、アニメ、映画、絵画でもいい。むしろ作品でなくたって構わない。人や動物でも構わない。家族、友人、恋人、芸能人、パグ、くじら、ハナカマキリ。
あなたが好きな"何か"を、誰かに伝える時。どんな言葉を使うだろう。


伝える相手が親しい人ならば、非常に簡単な/安易な言葉で済んでしまうかもしれない。
「あのね、私××が好きなの!」
相手はきっとそれなりの興味を示してくれるだろう。何故ならあなたとその人は近しい存在だから。その人にとって、あなたという存在がある程度重要な割合を占める人だから。そんな"あなた"が好きである××のことを、その人は"あなた"の重要度を担保にして興味を抱いてくれる。


では、そうでない相手だったら?
相手にとってあなたが大して重要じゃない存在であれば、「ふーん、そう。」で話は終わってしまう。好きでもない"あなた"が"好き"な××なんて、どうでもいいのだ。


あなたの存在を担保にすることなく、誰かにあなたの"好き"と伝えるには、説得力が必要だ。
どうして好きなのか。どこが好きなのか。あなたのごくごく個人的な感情(好き)を、誰にでも伝わるような安直な言葉に押し込めなければならない。適当な言葉なんて見つかりっこない、と誰しもがもどかしさに悶える。「好きだから"好き"」、これ以上のシンプルで美しい、純粋な方程式は有り得ないのに、あなたが放つ"好き"という言葉では何一つ相手に届いてくれやしない。
あなたの"好き"はあなたにとってだけ理解できる、誰とも共有できやしないあなただけの感覚だ。それを理解した上で、それでも誰かと共有したいと思った時、あなたはきっと批評家になる。なろうと思ってなるわけではない。あなたが自らの内から迸る"好き"を誰かにとっても理解可能な"好き"に変換しようと、あらゆる言葉を手探りで選び取る時、あなたは間違いなく批評家になる。
「好き」に頼ることを止めて"好き"を伝えようとする時、あなたは批評家になれる


あなたの感情で、相手の感情を揺さぶることは難しい。
あなたの理論で、相手の感情を揺さぶってみるといい。「理論で感情を動かす」、それが批評のやり方だ。

guardian

アルバムトランジスタの道化団から、狛犬の双音が動画として投稿されました。
呪術的なフレーズをこれでもかと散りばめることを目的に据え、ゴリゴリと組み立てた一作です。華美で絢爛、ド派手な打ち上げ花火のように。ikaさんも仰っているように、「夏の終わりにどうぞ」。
動画はこちら、歌詞はこちら


■character

かつては人里だったが、今となっては誰も足を踏み入れぬ山奥にある神社。
人が丹精込めて創り、命を吹き込まれた対の狛犬は、取り残された後もずっと護っている。
神社と、御神木である櫻木を。


■story

「僕等」はずっと双りきりで待っていた。
人が此処に帰ってくる日を。櫻が再び咲き乱れる春を。


待っているだけでは駄目なのだと、彼女はある予言を齎した。
だから僕等は往く。手に手を取って番の狛犬は往く。
真夜中の神社を飛び出し、春を迎えに往く。

riding!

MOSAIC.WAVの13thシングル「MUSIC FOR RIDING!」はロードバイク×アキバPOPという摩訶不思議な組み合わせ。
初回特典で付いてくるCDの2曲を作詞しました。どちらも「MUSIC FOR RIDING!」に収録されている曲の歌詞違いなので、聴き比べてもらえると一層愉しい仕様です。
詳細はこちらから。


Wheel of Fortune
「運命の輪はきっと回り出す」
「どうか、どうか 追いついてみせるから」


キクミミモタズ!
「ドレミファソラシで歌えば 最高にハイな気分なのだ!」
「さぁ、反撃開始の合図には きっとこの歌がお似合い!」


- - - - -


そしてもういっちょ。同じくMOSAIC.WAV制作「ローレグエンジェル夏到来!」でも1曲作詞してます。
風と共に往く旅人の歌を書きましたが、あんまり夏っぽくないですね。申し訳なくなってきた。
詳細はこちらから。


風のシンフォニア
「鮮明に 高らかな歌声のように」
「永遠に まるで夢を視ているように物語は続く 朝も夜もなく」

downpour

灰ノ詩は情緒不安定な曲だ。
思い出を懐かしむように甘く歌っていたと思ったら、痛みに引き攣ったように激情を訴える。
リンの悲しみが、驟雨でも洗い流せないほど身と心に沁み付いた悲しみが聴こえる。


この雨が慈愛というなら いなくなれ
強く強く、刺し込める叫びに痺れる。


瞼を焼いたのは明けか夕暮れか
零れたメチルアルコールの蜃気楼


どれだけ慰めても灰は灰へと帰る
それだけが、最後に残った真実。

celtic

ネットチルナノグ。呪文のようなそれを唱えれば、春の精霊が舞い降りて共に踊り出す。
ケルティックな懐かしさと、驚異的なまでにポジティブでリズミカルな音の群像がたまらない。


手に手を取って、大地のビートで、野原の草を蹴って、炎の揺らめきに合わせて、鼓動と熱を体で感じて。
空の青を仰いで、瑞々しい風を吸って、円の軌道を幾度もなぞって、誰も彼も喜びの中で息をして。


ネットチルナノグ
リンカリンカシェナム
歌うように、笑うように。僕らは春に踊る。